MEMORYS  2003年6月〜2004年7月
ここまで「気まぐれ雑記帳・いちいの庭から」。以降、「ひとこと日記」にタイトル変更。


7月19日(月) 日曜日に、こんなことした。

昨日は、午前中、娘の高校の学校祭を見物。
若いということは、なんて素敵。たいしたものです。
写真は、クラス対抗「垂れ幕コンテスト」。


午後から、シアターZOOで風蝕異人街の「授業」(イヨネスコ作)を観劇。

開演まで1時間ほど時間があったので、渡辺淳一文学館を訪ねた。
いちど見たいと思っていたので、良い機会。
南高時代の加瀬純子(「阿寒に果つ」のモデル)の文章や、
渡辺が同級生に送ったラブレターに心ひかれたのは
高校生を見てきた後だからかな。
生原稿って、不思議。
活字になることによって消えるものと、浮き出してくるものがある。
それと、渡辺作品は中国でずいぶんたくさん翻訳され(展示されていた)
「愛の毛沢東」と呼ばれているんだって。びっくりした。

さて芝居ですが、たいへん面白かった。
劇団極の西山美紀子。ユニットやプロデュース公演が全盛の昨今、
決してよそで芝居をしない、伝説的、といってよい実力派。
その彼女が他劇団の芝居で主役を張った。
どんな心境の変化があったのだろう。
「柄本さん(明)の『授業』を見て、すごく面白かったから」と言っていたが。

老教授のもとへ、女子学生が講義を受けに訪ねてくる。
初歩的な質問にも答えられない学生を相手に、
懇切丁寧に算数や、語学を教えるうち
教授のなかにある凶暴な精神が目覚める。そして・・・・。

西山は、その教授。
洪水のようなセリフ、意味を追うことをあきらめたくなるほどの言葉の渦。
それが、西山にかかると、くっきりと脈絡と色合いを持って、聞こえてくる。
抑制、激高、要求、拒否、期待、不安、等など、
移り変わる感情や、対象との距離が、詳細に見えてくる。

こしばきこう演出も、意図が明確で、好感が持てた。
西山の硬質な部分を、きれいに生かした。
冒頭、西山がゆっくり登場して、正面に座る、その動きから最後まで
能のような、というか、早稲田小劇場風というか、転形劇場風というか、
スリ足直線歩行と、フラメンコを取り入れた動き、足づかいである。
セリフだけで、十分面白いと思うけれど、それらの動きがあることで
変化が出て分かりやすい、とはいえる。
最後に象徴的に出てくるハーケンクロイツ、私は要らないと思うけれど。

午前中、長嶺ヤス子さんから電話。
12月6日、厚生年金会館で「オルフェ」を公演するとのこと。
8月上旬、その段取りのために1週間ほど来札する、とのこと。
また、金魚のフンのように、ついて歩こうかな。
彼女の言動を傍らで見ていると、とても色んなことを考えさせられます。
いい人とか、素敵な人とか、そんなことを超越した(いや、もちろん素敵ですが)
なんとも不思議な存在感のある人で、
私はその横で、猫のようにじっとしているのが、心地よいのです。


7月9日(金)

栗の花が満開。
お向かいの牧師館の脇の、文字通り「大きな栗の木」です。
花の匂いが強烈。50メートル先から、
ちょっと生臭いような、官能的な香りが分かります。



斎藤さんの退職後、主がないままの牧師館は
先日、内部の改装が終わって、新しい住人を待っています。
お向かいの久保田さんは、去年6月におばあちゃんが亡くなって
先日、納骨するのだと、ご親戚が集まっておられた。

そんな、ひと気のない一角に、この栗の木が満開の花を咲かせ、
久保田さんのお庭には、色とりどりのバラ、ラベンダーなど咲き乱れ、
ちょっと「秘密の花園」状態です。

我が家のカリンズが、もうすっかり赤くなりました。
晴れた日に、摘み取りましょう。


6月25日(金)  本を注文。

早速、多田智満子の本を3冊、Amazonに注文。
思潮社の現代詩文庫「多田智満子詩集」(どんな作品が収録されているか不明)。
エッセイ「魂の形について」。晩年の「犬隠しの庭」。
「ハドリアヌス帝の回想」「東方奇譚」「花の神話学」は
トランクルームに預けてある本のなかに、あるはず。

ずいぶん久しく「詩」というものを読んでいない気がする。
うつくしい言葉に触れたい、むしょうにそんな気がして。


6月25日(金)  早速情報、判明。

昨夜の雑記帳に、早速情報が寄せられ
長年の気がかりが解決した。
知らせてくれたのは、
札幌学院大「演劇とアートマネジメント」OBの悦朗くん。
ありがとう。
出典は以下の詩でした。確かに、これに間違いない。
この人の詩を、読んでみよう。この、言葉の調子がとても好きだ。

雲に兆(きざし)がある
ひびわれた骨に兆がある
喪神に向かっていそぐな心よ
すべて美しいものは風に描かれてある

「映像U」より(詩集『闘技場』(1960)から)/多田智満子


6月25日(金)  喪心、という言葉

長いこと、気になっている言葉がある。
あるいは有名な詩句なのかもしれないのだが、出典が分からない。
「喪心に向かって、急ぐな心よ」
次いで「すべて〜は、〜されてある」と結ばれるのだが
そこが思い出せない。

これは、あるテレビドラマに出てきた言葉で
時代は1960年代後半から70年代前半だと思う。
配役の一部に記憶があり、病身の姉が香山美子、近藤正臣が弟。
父親(だと思う)は大滝秀治。     
それで、この一家の苗字は「香月」といったと思う。
画家・香月泰男あたりを連想するが、どうなのだろう。
静かな家庭劇だったが、劇中、墨書されたこの言葉が
なぜかいつまでも、心に残っている。
どなたか、ご記憶があれば、小さな手がかりでもお知らせください。


6月11日(金)  出て来いザメラ。ザメラを醒ませ。

ひと月近くご無沙汰するうちに、すっかりいい季節になりました。
お変わりありませんか?
9日から「ヨサコイ・ソーランまつり」が始まって、町はにぎやかなのかな?

最近は、何してるのか、って? はい、あれこれ、やってますが、
なかなか、ご報告できるところまで、まとまりません。
もう少し、待ってね。ドンとまとめてお知らせします。
実は、何かと楽しいハナシもあるのですよ。
夏から秋へのレッドベリーは、乞う、ご期待です。

ところで、「チョウザメ」って、知ってる?
サメ、といっても、ジョーズみたいに歯があるわけではない。
正真正銘のお魚。キャビアはチョウザメの子です。
このチョウザメ、最近、石狩で捕獲されて話題になってますが、
昔から石狩川のヌシ、と呼ばれ、「弁天社」という古〜いお宮には
チョウザメを神格化した、石狩オリジナルの神様が奉られてる。
体長何メートルもあるような大きいのから、小さいのまで種類があるらしい。
ちなみに、石狩市役所のロビーの水槽には、可愛いチョウザメがいます。

それがどうした、って?
実は今、石狩市の8月のお祭りに向けて
小学生〜高校生の表現ワークショップをしています。
講師は「八軒物語」でおなじみ、本間盛行さんがお芝居部分。
音あそびの部分を、TPSの芝居でもおなじみ、ご近所づきあいの百瀬俊介さんが担当。
他にも、「八軒物語」メインメンバーの長谷川聡さん、
さっぽろ村ラジオの松崎霜樹さん、
などなど、おもしろがり屋フルメンバーで、取り掛かっているのですが、
この「チョウザメ」を、もっと親しみやすい神様にしちゃおう、という話があるのです。
一説に、「ザメラ」なんて、どうかしら?などと。

美深には、天塩川のチョウザメを多数飼育している町の施設があるとのこと、
見にいってみようかな。


5月15日(土) 石狩、いしかり、雨と晴れの。

昨日、一昨日と仕事の打合せで、石狩に通いました。
1日目は雨。予定の行動が出来なかったので、
話に聞く「番屋の湯」を、体験してみることにしました。
仕事モードから、レジャーモードへ、一気に切り替えて
露天風呂、展望休憩室、食堂等など、全部、拝見しました。
にぎわってますねえ。
雨で、自慢の風景を見られなかったのが残念。いつか夕陽を見に、もう一度。

石狩本町、市発祥の地。石狩市全体から見ると北東の端っこの
小さなエリアですが、石狩川が海にそそぐ劇的な河口のまちです。
     ここからは海となりゆく
     石狩の河口に立てば、立てば天啓。
はまなすの丘公園ビジターセンターに掲げられた、俵万智のうたです。

2日目は晴れ。仕事に同行してくれた役所の人とお別れして
ひとりで本町を散策。河口の堤防。船着場で釣りをする人。
潮風にさらされて壊れかけた家。槌音高く新築中の家。
旧役場跡の建設工事。様々な宗派のいくつものお寺、神社。
浜辺のサケ料理店。

浜に向かって歩くと、道端の藪からピーピー、ピーピーと鳥の雛らしい鳴き声。
そーっ!と近づくと、ピタリと声が止まりました。
目の前をシュッ!と鳥がかすめ飛び、行く先の道をヨタヨタ、歩いてみせる。
きっと、雛を守るためのパフォーマンス。
ごめんね、驚かせて。何も悪いことしませんよ。何の鳥なのかな。

ビジターセンターで、石狩の地ビールとサケチャーハン。それに、美味しいと評判の
はまなすソフトクリーム。かすかなピンク、かすかな香り。どれも美味しかったよ〜!


5月12日(水) 毎度、ありがとうございます。

きょう、さりげなく、1,000カウントを突破。
4月6日設置から37日目。
自分でカウントを踏んでしまうこともあるから割り引いて、
それでも、1日平均15〜20人の方が、何らかの用事で
来てくださっている計算になります。
うれしいな、いつもありがとうございます。
せっかくなら、来訪ついでに掲示板に一言、お願いいたします。


5月9日(日) 久しぶりに円山公園で。

学院大の講座OBが企画してくれて、円山公園でお花見をしました。
その様子は、http://www.akai-mi.com/art-management.html
に載せました、ご覧ください。

円山公園は懐かしい場所です。
石狩沼田から引っ越してきて、最初に入った小学校は、円山小学校です。
公園の脇を通り、北海道神宮(当時は札幌神社)の第二鳥居の坂を登って
家に帰りました。
中学のとき、宮の森の家から、学芸大学附属中学まで、市電で通っていました。
円山の電停まで、毎朝夕、円山公園を通りぬけます。
20代後半、フリーで仕事をしていたとき、円山公園に隣接する
古いアパートを仕事場にしていました。
「麗林荘」という名の通り、窓を開けると目の前が円山公園です。
上の写真の、白いマンションのあたりが、そのアパートの位置。
このまっすぐな樹木の並びは見覚えがあります。

歩いてみると、少しも変わらない懐かしいものと、全く変わってしまったものとが
モザイクのように混在し、なんとも不思議な気持ちになります。
こんど、ゆっくりと歩いてみようと思いました。


5月2日―その2  野毛の元次郎さんのサイト

以前、このページで紹介した横浜野毛大道芸のシャンソン歌手、元次郎さんの
追悼サイトを紹介します。
野毛についての著書「大道芸および場末の自由」がある平岡正明が
追悼文を寄せている。(私にとっての野毛は、この本から始まっている)
友人のひーさんの文章が胸にせまる。

http://spoon.cot.jp/ganjiro/index.html



5月2日(日・祝) ステラプレイスのストリート・パフォーマンス

昨日5月1日から5日まで、JR札幌駅のステラプレイス南コンオースで行われている
ゴールデンウィークのイベントに、3つのグループをコーディネートしました。
読み語りの松本直人さんと三人のクラシック演奏家によるTenpaカルテット。
高橋甲さんのタップハウス。
そしてブルーグラスの平塚研太郎さんのグループ。

きのう、Tenpaカルテットが2ステージ、出演。
1回目、ちょっと場の雰囲気がつかめず、
読み語りの「ブレーメンの音楽隊」は集中が途切れる場面があったので
2回目、前半、後半に分けて、間に演奏プログラムをはさむことにしました。
これが成功。松本さんがステージを降りて、客席近くで演技したのも
良かったようです。

さて、きょうと明日は、高橋甲さんとお弟子さんたち、それにパーカッションなどが
加わって、楽しいタップダンスのショウステージ。
2日間、2ヶ所でそれぞれ2回、あわせて4回、あります。
2日  15:00 1階東コンコース
    18:30 センター3階西アトリウム
3日  17:30 1階東コンコース
    18:30 センター3階西アトリウム

また、ぜひ聞いていただきたい平塚研太郎さんのブルーグラス・フィドルは
5日に2ステージ。16:00 センター3階西アトリウム、17:30 1階東コンコース。

ライブとストリートパフォーマンスの中間くらいの
気軽なスタイル、色々工夫すると、これは実に楽しいそう。
お出かけのついでに、お立ち寄りください。


4月19日(月)  考えがまとまらない。

7日付朝日新聞夕刊に、辻仁成の文章がある。
「パリで子育て テロの時代に」というタイトル。
人質事件の直前に書かれたものだ。

妻(中山美穂)がパリで出産したこと。
パリに住み、イラクやパレスチナをめぐるヨーロッパの動きが
生々しく身近に迫る実感を記している。そして、
「独自の外交を繰り広げるフランスの知恵に米国とは対照的な光を見た。(中略)
武力行使ではもはや世界は一つにはならない。
むしろ、一つの世界という美しい言葉は大変危険な匂いをはらんでいる。」
としている。

同じ文章のなかに
「世界は現在、大戦のなかにある、となぜ誰も論じないのか。」とある。
テロとの戦い、ではなく、大きな戦争なのだと。

自分の中で、矛盾する考えが、あれこれゴチャゴチャになっている。
今回の人質事件では、身近かな人を含め、たくさんの人が明確に考えを述べていた。
それが、なんとも両極端で・・・・・・。
考えかたはともかく、どうして、そんな言い方をするのかなあ、というものも多かった。

「丸腰だからこそ、安全なんだ」と、高遠菜穂子さんは常々言っているという。
国も、そうだろうか。
自衛隊のことを考えると、そこに行きつく。
私は、軍備を全く持たない国、というものの可能性を、
信じることができないでいる。
平和憲法を学んで育ったが、いつもこの点が腑に落ちない。

20数年前、社会党に属する知人に
「(軍備を全く持たずに)それで、もし、どこかから攻めてきたらどうするの?」
とたずねたら、彼はにっこり笑って、楽しそうに言った。
「そのときは、もろ手を挙げて、コウサ〜ン!って言う」。

冒頭の記事にもどる。
そういう、フランスのような、独自の位置を、
日本は獲得できるだろうか。

可能性だの、できるだろうか、だの言ってないで、
「自分の意志」というものを、持たなきゃいかんだろうが、
と、自分に言ってみる、けれど・・・・・・。


4月15日(木)  21:30、第1報。
 
イラク人質の3人が解放された。
1週間の経緯。膨大な、知りえない事実。
解放されていない人質の、表情。
映像の力。「言葉」では伝わらない本当のこと。
なんだったのだろう。


4月14日(水)  新学期、今年のテーマは色とりどり。

新学期。12日札幌大学の初日で、年間を持ち回りで担当するメンバーが顔を揃えた。
私の担当は12月〜1月に5回。今年は「色彩から考える北海道」というタイトルで
色にまつわる文化、産業、その背景、歴史などについて、話そうと思う。
5回だから、はじめに色彩全般について。2回目は赤、3回目は青。
4回目は白と黒。5回目はさて、何にしようか。

東が青、南が赤、西は白、北は黒という、陰陽五行の配当色は、
中華街の門の色にも、「青春、朱夏、白秋、玄冬」という四季の呼称にも
季節の様々な行事にも反映され、知れば知るほど面白い。

アイヌ語で、赤は「フレ」である。赤い実は「フレヌム」、又は「フレップ」。
「フレベツ」という地名があれば、それは赤茶けた土(岩?)と川があるところ、と想像できる。
富良野塾の住所、富良野市西布礼別というところには、「赤い川」があるかしら?
山田秀三さんのアイヌ語地名の本は、とっても楽しい。
赤については、紅花やコチニールの話も。

青は、藍について。北海道伊達市は藍の生産量が全国一(約30トン)。
本場徳島との交流の歴史や、北海道独自の取り組みについて、調べようと思っている。
札幌あいの里は、かつて藍が作られたことからきた地名、と聞いている。
開拓使が、米の代わりに藍の生産を奨励した経緯があるという。
八軒は、開拓使の実験農場地域だったのだが、藍は作っていなかったんだろうか?
誰かに聞いてみよう。

13日、札幌学院大「演劇とアートマネジメント」初講義。
今年はちょっと人数少なめで受講生14名の予定。
中国からの留学生1名。韓国から2名。女性が3名しか居ない。
いつもながらみんな個性的で、自己紹介にも持ち味が炸裂。たのしみ。
それにしても、OB、OGが10人近く顔を見せてくれた。
このパワーを講座に活かしたい。


4月5日(月)  桜満開の横浜、鎌倉、旅日記。

3泊4日で横浜に行ってきました。札幌を離れるのは久しぶり。
中華街のお気に入りのおかゆを食べ、なぜか人気の「ぶたまん」を歩きながらほおばり、
ジャスミン茶を買いました。
元町のスーパー「ユニオン」で果物をたくさん買って、ホテルで食べました。
横浜埠頭の広大なウッドデッキはとっても素敵。クイーンエリザベスとか、あすかとか、
豪華客船が入ると30万人もの人が見に来るんだと、タクシーのおじさんが言ってました。

鎌倉にも足をのばしました。北鎌倉で降り、駅前の小さな美術館へ。
ベネチアングラスを使ったアクセサリーやドレスのコレクションが素晴らしかった。
東慶寺は、いわゆる駆け込み寺。静かな優しい雰囲気のお寺です。
年配の男性客が多いのはなぜかしら?と思ったら、
和辻哲郎、清水幾太郎、鈴木大拙、高見順といった人たちのお墓が、そこにもここにも
ひっそりとあるのでした。
鶴岡八幡宮。桜並木の参道の正面、石段のうえにそびえるあの華やかなお宮が、
なぜか好きなんです。

娘と一緒の小さな旅。なんと80時間以上も、片時もはなれずに一緒に居たなんて
これまでに何度、あったかしら、と話し合いました。


3月24日(水)
ごめん、また更新が滞ってしまいました。
元気ですか? もうすっかり、春ですね。
久しぶりに、「昔とった杵柄」みたいな仕事の話をいただいて
うれしいな、がんばろう、という感じです。
スムーズに、楽しくやれたらいいな。

うれしいこといっぱい。いやなこともいっぱい。


3月13日(土)
野毛の元次郎(がんじろう)さんが、亡くなった。昨日、とのこと。
ストリートパフォーマンスの祭の老舗「野毛大道芸」
20年あまり唄い続けた、街頭のシャンソン歌手。
毎年4月に行われるこの祭、今年はいけるかなあ、とHPを開いたら
訃報が載っていた。
おととし、2002年の4月、初めて「野毛大道芸」を見にでかけた。
このとき、1日3回の元次郎のステージを、全部聞いた。
とっても良かった。泣けて、泣けて、しかたがなかった。
そのとき「元次郎が、癌になっちゃって」と、笑いながら言っていた。
去年の初夏、元次郎HPに闘病中の日記が載っていたので、メールしたら
丁寧な返事をいただいた。お会いしたのは一度だけ。

存命中に一度だけ、お会いした、というか、姿を見たひと。
三島由紀夫、帝国劇場のロビーでパンフレットにサイしてもらった。
武原はん、神戸まで舞の会を見に行って、前から3列目で地唄舞「雪」を見た。
寺山修二、亡くなる半年前、糠信淑美さんが催したショーに来札したとき。
私って、やっぱりミーハー。

元次郎さん、もう一度、歌を聴きたかった。
来月17日、18日に行われる「第28回野毛大道芸」は、元次郎追悼公演
だそうです。行けるかな?行きたいな。


3月3日(水)
明かるい陽ざしを受けてかた雪が真っ白に輝いてる。
その上を、猫がゆっくり通り過ぎる。
白黒のブチ。元気だったんだね。
去年の春、子猫を5匹つれていた、かあさん猫。
なんて気持ちのいい、ひな祭り。
娘の高校受験日です。がんばれ!

久しぶりに、古本屋で本を売った。
めったに売ることはしないのだけれど、たまに
本棚に置きたくない本は売る。
今回は、もう読まない作家の単行本2冊、文庫本9冊。
一軒目の店では、「Aさんの本はよほど新しくないと」
と、値がつかなかった。
2軒目で、750円で買ってくれた。
780円のウィスキーを買った。
これでいい。飲んでしまおう。


2月26日(木)
ドアをあけると、春のにおい。屋根の雪が解けて絶え間ない水滴の音。
でもきょうこれから、また吹雪の予報です。春はもう少しおあずけ? 

昨日、「八軒物語」のためのオリジナルソングが出来あがりました。
私からキーワードを挙げて、ゴスペルトレーナーの横尾美穂さんが
作詞作曲してくれたもの。すごくかっこいい八軒の歌が出来ました。
29日の公演で、初公開。
ちゃんとレコーディングして、琴似八軒の色んなところで
歌ってもらえたらいいな。歌詞をご覧ください。


2月18日(水)
「せめて週に一度くらいは、更新された近況を読みたい」
と、友人からあたたかいメールをいただいた。
その返信のつもりで書き始めたことを、ここに載せます。

週いちくらいは更新しなくちゃ、誰も見てくれなくなるよ、
と、中学生の娘にも言われ、自分でもまったくそのとおりだと思うのですが、
昨年スタートから半年ほど書いてみて、この欄に、何を書いたらいいのか
とても迷ってしまいました。

気楽に、自分の生活や、出来事や、思ったことを書けばいいのだ、
と思うのですが、いざとなると、書けない、言えないことが多すぎる。
自分をさらすことが、こわいのかな。
うれしいことの多くは、誰かの言葉だったり、行為だったりする。
いやなことも、多くが誰かの行為だったり、考え方だったりする。
だから結局、あまり気軽に語れない。

それじゃ、見たもの、聞いたもの、食べたもの、なんかについて
書こうかな、と思うのですが、ぜひ書きたい、という感動がなくちゃ、
書いてもつまんないでしょ、と思ったりして。

ひとつ、ヒントをいただいた。
誰かに手紙を書くようなつもりで書いたら、書けるかしら?

週に一度は、ひとことでも、書こう。やってみます。


1月21日(水)
近況です。
めずしく、たてつづけにオペラを2本、観ました。
16日、スロバキア国立オペラ座。
17日、地元声楽家による「蝶々夫人」。

スロバキアオペラは、道新の長谷川洋行さんの記事で知った。
楽しかった、素晴らしかった。ブラボーです。
サンプラザのステージにはピアノが1台。アレンジフラワーがひとつ。必要最低限の衣裳。
にもかかわらず、歌い手の力量(歌唱力と、演技力)で、ありありとドラマが見える。
女たらしのダンディー、生真面目な貴族、複雑な中年男性。
コケティッシュな少女、キレのいい女優、苦悩する硬質の女など
様々な人間のタイプ、性質がくっきりと描かれる。
料金は3,500円。5年前から地道な活動が続いているとのことで
固定ファンらしい人たちの、楽しげなざわめきが心地よい。

一方、「蝶々夫人」は教育文化会館大ホール。
オケピットでちゃんとオーケストラが演奏しているというのは、やはり豪勢。
オペラカーテンが揚がる瞬間はわくわくする。幕間のワインもいいな。
字幕入りで、改めて内容がよく分かった。
あと味のわるさに変わりはないが、実に周到によく書かれた作品なんだなあ。
なんて、雰囲気の話ばかりしているが、内容もなかなかでした。
夫の帰りを待つシルエットの演出、春の花をまき散らして歌うシーンの美しさ。

いいものですね、オペラも。


2004年1月1日(木)
あけましておめでとうございます。
11月で更新がとまったまま、年を越してしまいました。
他のページは、それなりに、こまめに更新しているつもりですが
この欄、何を、どんな風に書こうか。けっこう性格づけが難しいですね。
気持ちをあらたに、続けます。気長にお付き合いください。

2004年の目標と抱負を。
1.「表現教育指導者養成講座&ドラマワークショップ」を、新たな枠組みで継続する。
2.「八軒物語」製作、地域の物語採取活動、「わいわい広場」開催を継続する。
3.あらたな事業として「赤い実塾〜Academia hure-p(アカデミア・フレップ)」(仮称)を
  スタートさせる。各界の、様々な方にお話をうかがう、たのしい寺子屋です。
4.レッドベリースタジオで現代アートの催しを開催する。
5.アートマネジメントに関する大学などの仕事を、より充実させる。
6.連載記事など、原稿を書く仕事をバリバリこなそう。
7.事業収支を好転させる。

まずは当面、2月末〜3月の「八軒物語2003」本公演に向けて
各プロジェクトの製作をすすめます。
同時に新年度のための助成金申請を急がなければなりません。

今年もよろしくお願いいたします。平和な、良い年でありますように。


2003年

11月3日(月)
きのう、初めて雪虫を1匹、見ました。
もう雪かな、と思いきや、きょうも暖かな小春日和。
少し、庭の片付けをする。
ちょうど庭仕事をしていたお隣のおじさんに教えてもらいながら、
伸びているぶどうの枝を短く切り、古株をノコで切って、大事な枝だけ残し、
雪囲いをして、これで安心。
縄をギュッと絞める、おじさんの職人縛りに感心。かっこいい。

ミントやほうずきなど、伸び放題になっているのを刈り取ってすっきり。
可愛いほうずきの赤い実、青い実を写真に撮りました。
NEWS NOW ONに載せましたから、ご覧ください。

これから年末まで、あっという間に過ぎてしまいそう。
スケジュール表は隙間なくびっしりです。
きょうみたいな忙中閑あり、を期待しよう。でも、身体は結構疲れましたね。
あ〜、温泉行きたい。いつまでも眠りたい。

そういえば「極楽湯」に行こうかな。
北3条西12丁目あたりの弥生会館のところにオープンしたスーパー銭湯です。
料金は370円、だったかな。居酒屋とかもあるそうで、
いつも、うそっぷの会の練習に行っている市視覚障害者福祉センターのすぐそば。

先日、市から補助のある「すこやか健診」というのを受けてみた。
肝臓とか、腎臓とか、大丈夫かな。内心、けっこう心配したのだけれど、
がっかりするほど、なんでもなかった。きわめて健康。
オプションで調べた膵臓や、甲状腺ホルモンも大丈夫。
中でも善玉コレステロールの数値がとても高いといわれた。
いわしとか、秋刀魚とか、しょっちゅう食べてるからかな?

つまり、私はとてもいいコンディションなのだ。
あとは仕事をバリバリやれれば言うことなし、なのである。









 お向かいの幼稚園のコスモスと
 八軒会館のイチョウ

10月26日(日)

携帯電話を濡らしてしまって、買い換えた。
百数十件、入っていた電話帳データが全滅、これは痛い。急いで登録しなおさなければ。
しかし今回初めてカメラつきを購入、初めて撮った写真が上の2枚です。
携帯カメラもたいしたもんですね、すごい!
デジカメ持って歩くのはけっこう重いから、これからは携帯カメラで色んなものを写して、
ホームページに載せましょう。災い転じて、ちょっと嬉しいかも・・・・・・。


10月5日(日)  久しぶりにいいものを見た。

 3日(金)19:30、高橋甲タップダンス公演。千歳鶴酒ミュージアムにて。
甲くんは20数年前、劇団しゃどうずで圧倒的な魅力をふりまいていた。荒削りな、しかし表現者として天性の
たたずまいを持っていた。
芝居をはなれて商業ダンスの世界に飛び込んだのは、なにかしら確かなスキルを身につけたいという、
プロへの志向だったのだと思う。
今も昔も、日本の演劇の世界では、プロに通じる確かな道筋、身につけるべきスキルというものが、了解されていない。
本当に最近、ここ2〜3年、ようやく演劇表現の様々なメソッドについて、語られ始めたばかりだ。

 甲くんが東京で修行して、札幌にもどってきた、そう聞いたのは何年前だったか。
かつての仲間の芝居に、幕間アトラクションとして出演したのを見たが釈然としなかった。
表情が暗く、なにか、いらだっているように感じられた。
そして今回、たまたま道新オントナで紹介記事を発見した。
「あすてあ珈琲」を経営、1回1000円でタップダンスを教えている。近々、公演があるという。
行こう、と決めた。

 感が的中した。なにげなく、さりげなく、ステップをふみはじめてから、踏み終えるまで
片時も退屈させない、豊かな彩りと陰影、バリエーションは、40代半ば、現在の高橋甲にして
初めて可能なものだろう。
古典のチャールストン、チゴイネルワイゼンにのせた創作タップの意外性。
圧巻は20分あまり、ステップだけで見せる、聞かせるソロ。
木の床と、厚いプラ板の微妙の音色の差を使い分ける、繊細なタップ。
マイムや芝居の要素もある。
衣裳も燕尾服から、タンクトップまで、ダンディーで、華麗。

 会場も良かった。太い梁のある高い天井、板張り床、40坪あまりの空間。
地元酒造メーカーの酒造資料館、ショールーム、試飲コーナーを兼ねたもので
ジャズライブなどのイベントを開催している。
料金1500円に、生酒1合と海鮮の粕漬けがひと味、付いている。
ただし、あらかじめ問い合わせて、18:30開場、19:00開演を確認して出かけたのに
開演は19:30だという。これはいけません。

今回はピアノライブとタップのセッションを予定したが、実現しなかったとのこと。
いずれぜひ、見たいものだ。


9月21日(日)  暮らしの基盤整備?

しばらく更新がとどこおり失礼しました。
このところ、懸案事項のいくつかに着手、解決に向かっています。
まずひとつは、会計管理ソフトを購入、日々のお金の動きが分かりやすくなりました。
家計、仕事、事業単位の会計、立替金、借入金、負債など
簿記の知識のない私でも、全体を掌握できないはずはない、と心決めして
あれこれ試みています。まず1ヶ月、使ってみてください、とある。
確かに、実際の動きを入力してみると、なるほどそうなるのね、と納得。
なかなか良く出来たソフトです。

もうひとつは、本を預けているトランクルームの整理。
月々の家賃がバカにならないので、少し安い、小さな部屋に移ろうと計画したのが
4月頃。書架に並べてある本のうち、日常使わないものはダンボールに収めて積み上げ
必要なものだけ出しておきたい。
書架のスペースを有効に使うために、仕切り板を増設したい。
学院大の学生2名が手伝ってくれることになって、ようやく実現の運びに。
ありがたい。必要な資料が使いやすくなります。

これでかなり、頭がすっきりするかしら?
機能的に仕事をするための基本的なこと。
まだまだ解決する必要がありそう。


9月4日(木)    いろんな舞台を観た

C.J.ジョーンズ  パフォーマンス「The Living Cartoon」
8月29日(土)18:00 やまびこ座
  シージェーは、7歳で失聴、両親も聾者というアメリカ人パフォーマー。
  なにしろ陽気。人生の、世界の、何もかも面白く、楽しく感じさせる感性によって
  障害、言語、国境を越える、というメッセージを、確かに受け取った。
  聾者のパフォーマンス、といえば、いわゆるマイムで、言葉が介入しない、
  という先入観があったが、シージェーはそこに収まろうとしない。
  身体表現で場を切り取り、そこに必ず言葉を置こうとする。
  したがってここでは、手話が重要なコミュニケーション手段。
  アメリカの手話から、日本の手話へ。それを日本語で通訳し、プロジェクターでも
  文字表示。この複雑な連携プレーを、関係者の努力でどうにかクリアした今回の公演。
  音声の有無に関わらず、「言葉」は人間そのもの、ということを痛切に感じた。

YMG:イエローマングループ即興パフォーマンス
30日(日)15:00  やまびこ座
  著書「インプロゲーム」のある絹川友梨とその仲間の即興パフォーマンス公演。札幌では初めて。
  インプロヴィゼーション(即興)って、どういうこと?
  それはアドリブみたいなもの? 
  即興で公演、って、どんなことになるの?
  説明を受けてもよく分からない。百聞は一見にしかず
  ということで、な〜るほど。おもしろい。奥が深い。
  これは実に様々なレベルで、様々な場で、色んな展開が出来そうだ。
  しかし馴染みのうすい世界だなあ。
  これほど「思考のスピード」が要求される場面は、日常ではめったにありえない。
  札幌でも、若い人たちの間にちょっとしたインプロ志向が育っている。
  海外から移入された方法論にどんな中味を盛り込めるか。
  YMGはメンバーそれぞれが、演技、マイム、即興演奏、歌唱、そして照明などのエキスパート。
  これが、観客を楽しませる大切な要素だ。

KUSHIDA WORKING 「コーカサスの白墨の輪」
9月3日〈水)14:00 教育文化会館小ホール 舞台上と舞台袖を会場として
  演出家・串田和美。かつて伝説的な「上海バンスキング」を生み出し、
  近年は緒形拳と競演の「ゴドーを待ちながら」で、網走刑務所公演を感動的な成功に導いた。
  その串田が、1年に2ヶ月あまり北海道に滞在して、集まった俳優たちとじっくり芝居をつくり、
   3年目にはじめて公演を打とうという贅沢なプロジェクトの、今年は2年目。
  まだ中間発表で、あえて稽古場風の雰囲気で公演された。
  例の、子どもを争って母親ふたりが子どもの手を引っ張りあう話を下敷きにした、ブレヒト作品。
     きっぱりと語られる言葉。個性を濃厚に噴出させる身体。関係を明確に表す俳優の位置。
   生き生きと身近かに、シンプルに、複雑に、手にとるように伝わってくる群集劇。
     やっぱり演劇って面白い、と素直に感じられる嬉しさ。
  帰り道、Mさんとすれ違う。「面白かったですね」と声をかけたら
  「私たちはあの芝居をもっと深刻に受け止めてきましたから、ちょっとね」。
  そんな風に受け取る人もいる。

影絵劇団かかし座公演「ケト゜ペカムイの槍」
9月4日(木)10:50  札幌市内某小学校 
   劇団の方の情報で学校公演にもぐりこませていただいた。
   影絵、といっても、体育館の天井いっぱいに映る俳優の動きから始まる。
   手指で作るおなじみの影絵あそびなど、しばらく子どもたちとの一体感をつくってから
   物語に入る。伝承されているアイヌ少年の冒険譚を、萱野茂が訳・監修した。
   背景幕や、スクリーンのポールを祭祀のイナウに見立てた舞台が美しく
   鮮やかな風景描写も影絵特有のものだ。
   カムイの登場で使われた、ホログラムと見まごう視覚のマジックも効果的。
   影絵、俳優の演技、人形、映像など、さまざまな表現手段の混交は、いまや常識になりつつある。
   それが新たな課題を生み、同時に、意表をつく表現の可能性をもはらんでいる。


8月28日(木) 巷にもどったよ

仕事がひとつ、終了。自主的カンヅメ状態を解除。
久しぶりに、まちでお酒。
最優先課題だけを追いかけて過ごした数日は、奇妙に心安らかで
消耗するわりに、とても心地よい時間でした。
何とか調整して、月に一週間くらい、こういう時間をつくりたい。
日頃私は、いったい何をして暮らしているのかな。

長嶺ヤス子さんから電話。9月13日(土)17:00から、札幌で講演会をするとのこと。
会場はホテルルーシス札幌。地元のフラメンコグループによるアトラクションつき。
会費10,000円。やっぱり、顔を見にいかなくちゃね。
参加ご希望の方は、私、赤い実企画の飯塚までご連絡を。

シアターキノの「フリーダ」、見たいなあ。絶対、行こう。
引きこもりを止めたら、たちまちスケジュールが埋まりはじめるのですね。

ところで、昨夜の火星、見ましたか?迫力ありましたね。
もし、夜空の星が全部あんなふうだったら、ちょっと、こわい。


8月25日(月) 引きこもりの快感 

電話も、メールも、一切発信しない。人に会ったり、外出したりする予定を3日間、全く入れていない。
ひたすら取材テープの整理。遅れに遅れ、一刻も先のばしできない仕事です。
夜中といわず、明け方といわず、仕事、仮眠、仕事、家事、仕事、仮眠、仕事というように、過ごす。
ブラインドも下ろしたまま。こんな過ごし方は久しぶり。快適です。

雨が降ってきました。記憶を呼び覚ます午後の雨音。
20代、明け方まで放送原稿を書いていた。
あの頃はまだLPで、局のレコード室から抱えてきたレコードの山。
書き終えた音楽番組の最後の1曲がアズナヴールの「ラ・ボエーム」で、
針を落とし、イントロのピアノが聴覚と、脳髄と、全身に染みわたった。

久しぶりで聞いてみようかな、「ラ・ボエーム」。いまではCDですけれど。
そして、仕事に戻ろう。

PS.聴きました。50代には切なすぎるような、あまりにも、しっくりくるような。


8月23日(土)  ことばが出ない

書くことがないわけではないが、書きたくない。
不快をいくつ語っても、解決にならない。
今すぐ解決できないことは、据え置きとする。
すべきことははっきりしている。しかも、たくさんある。


8月19日(火) 60歳になったら

日中、いくらか夏めいた暑さ。陽が傾くとたちまち、秋の風情。

国民年金の最低加入期間(25年)をやっとクリア。一応、受給資格ができたことになる。
内訳を問い合わせてみたところ、
  厚生年金加入期間(つまり会社に勤めていた期間)が、137ヶ月(11年半)。
  国民年金加入期間(つまりフリーでそれなりの収入があった期間)が、85ヶ月(7年)。
  免除を申請して承認された期間が、72ヶ月(6年)。
  それに今回、平成15年度の12ヶ月分(158,950円)を納入して、合計306ヶ月。

「はい、60歳になったら来てください」。
役所で、朱色の表紙の「年金手帳」を手渡された時、
冗談みたい、と思ったけれど、その60歳はそれほど遠くない。
以来、それなりに気にかけてきた国民年金だけど、
これで65歳になった時、実際にもらえる年金は、猫のエサ代ぐらいだろうね、きっと。

年金制度はいずれ破綻する、そんなものに加入できない、NHKの受信料も払わない、
という人が身近にいて、「年金は自分のためだけじゃないのだから」とか、
「いつもNHKのニュース見てるじゃない」とか、言ってみても、論破できない(だろう)。
でも私は、とりあえず最低の役割は果たしたような気がして、ほっとした。

さあて、仕事、仕事。あと20年は仕事しなくちゃ。
母の菜園のインゲンが房なりで、さっとゆでて食べると、とっても美味しい。
ねこのミータロウも、これが大好きなんですよ。


8月14日(木) 霊園はにぎやか

先日、仕事のメモ、things to doを書きかえた。
懸案のいくつかが解決して、気分あらたにすっきりしたのだが、
その後1週間たって、解決したチェックよりも新たに加わった項目が圧倒的に多い。
う〜ん、私があと2〜3人いないと、追いつかないよぉ。

と、言いつつ、昨日はお墓参りに行きました。
母と、私と、娘と、3人で墓の掃除をしながら、娘がひとこと。
「結局みんな死ぬんだね」。
そのニュアンスは、しずかで、おだやかです。
40年経った墓石は、古びたような、まだいくらか新しいような。

私の時間は、たくさんあるのかな、それほど無いのかな。


8月9日(土) 

ゆうべ、サーバーの調子が悪くてHPの更新が出来なかった。
今朝、回復。嬉しくて、あちこち直したり、書き込んだりしている。
雨。落ち着きますね、気分が。
さあ、仕事をするぞ。でもその前に、スタジオの掃除。明日のワークショップの準備、連絡。
薬があと1回分しかないから病院へ。そんなことしてたら、また、1日はすぐに終わってしまう。
いますぐ、取りかかろう。補助金申請書の作成と取材テープおこし。大至急。



8月6日(水) 

10日連続のイベントを終えて、残務整理も収束に向かいつつあります。
今週日曜日10日には、第1回ドラマワークショップがスタートします。
スタジオは連日、市内の若い劇団の稽古、元気な声が響いています。
昨日から暑くなって、やっと夏らしい空気を深呼吸。
すべて世はこともなし、ならいいのだけれど。
いいことも、よくないことも混ぜこぜで、人生色々あるものですね。
なぜだか、ボンヤリしてしまいます。
こう言えるのは、少しだけホッとしたからでしょう。


7月29日(火)

またしても、ご無沙汰で申し訳ありません。
この1週間はイベント続きで、そのご報告を写真で NEWS NOW ONに載せた。ご覧ください。
26日「野外で映画上映会」と、「八軒わいわい広場」初日27日から、きょう3日目までの分。
「わいわい広場」は、レッドベリースタジオを開設して2年7ヶ月、初めて実現した念願の催しです。
いわば、この土地につながる自分自身のルーツを手がかりとする発信。
八軒連絡所の伊東所長をはじめ、條野雄一氏、斎藤貞夫氏、森木峯夫氏など、
地域に深い思いを寄せる皆さまが、この催しに思いを仮託してくださった結果、実現したもの。
今夜は祖父母をよく知っているというお客様がいらしてくださり、
地域100年の歴史が、大げさではなく身近なものに感じられた。
貴重な写真、図版をはじめ、屯田兵手帳など、めったに目にすることのできない歴史資料が
レッドべりーに展示されています。ぜひぜひ、ご覧ください。


7月21日(月・祝) まだまだ

あらためて昨日の雑記帳を読んでみた。たいしたことないな、と思った。
これまでに、もっと、もっと、すごかったことが、いくらでもあるじゃない。
どうした? 自分に聞いてみる。
いいの。新しいことをカタチにしようとする時、多少、ヨロヨロするのは当たり前。

お気に入りの居酒屋さんで、表現とか、アートとか、つい、真面目に話してしまい
若い男性に、ワークショップの案内を送りますから連絡先を、と言ったとたん、
「知り合いには弁護士もいますから」と言われ、これには、あ然。
とっさに何のことか分からなかったが、狂信的な宗教かなにかと間違われたのかな。
私の物言いに、そういうニュアンスがあったのか。おとといのことです。
結局、やるべきことを、ちゃんとやるしかありません。それしか、ありません。


7月20日(日)  嵐の4週間、前半終了。

ご無沙汰しました。この10日は以下のようでした。

7月9日  うそっぷの会定例練習(会計書類引継ぎ、新作台本準備)〜演劇財団で札幌学院大体験学習打ち合わせ
7月10日 ドラマワークショップ参加者募集チラシ、琵琶と篠笛チラシほか作成、札幌大学で「幻の町」鑑賞
7月11日 娘の中学校で進路について三者懇談。佐々木譲講演会
7月12日 借用した資料写真を返却に上泉氏宅(清田)へ、北海道遠友夜会講演会、切替英雄出版記念会
7月13日 東京女子大学同窓会北海道支部総会、ギリヤーク尼ケ崎青空舞踊公演
7月14日 「八軒わいわい広場」内容仕込み、取材テープ整理、各種支払い銀行まわり
7月15日 札幌学院大学講座体験学習立会い(かでる2・7)終日、午後一時スタジオに戻り利用立会い
7月16日 同上立会い2日目。午後、琵琶と篠笛リハーサル
7月17日 朝日新聞コラム原稿、札幌学院大学講座で斎藤歩の話を聞く(TPSスタジオ)
7月18日 補助金申請文書等作成、問い合わせ。スタジオ資金繰り
7月19日 スタジオ演劇公演仕込み立会い、第3回ドラマ指導者養成講座開催、配布資料準備等、ミュージカル観劇
7月20日 スタジオ演劇公演立会い、各種書類整理、スケジュール調整

上記のあいまに、ワークショップ、イベント等の企画内容盛り込み、につめ、実施について打ち合わせメール、電話。
参加者募集、宣伝活動。三角山放送局電話取材。スタジオ利用者との打ち合わせ、会場下見来客対応。家事。
どれもみな、期限のある事なので、気をつけないと破綻する。電気代、払わないと送電を止める、と黄色い紙が来た。
あぶない! これからの2週間はさらに、さらに過密スケジュールです。

庭のカリンズが今年はすばらしくよく出来て、カメラマンの平島さんに写真も撮っていただいた。
でも摘んでジャムを作る時間が全くなし。それで今年は、
なんと中学3年の娘が、お友だちと一緒にジャムづくりを引き受けてくれました。
小さいときから私の作業を見ているので、ちゃんと立派に仕上がりました。素晴らしい!

庭では、大好きなどくだみの白い花や、昨夏、コンカリの戸部邸からもらってきたムラサキツユクサの紫の花が
清楚な美しさを競っています。写真をとってお見せしたいけれど・・・・・・。


7月8日(火)

先週金曜日、21:45に表現教育指導者養成講座第2回を終了。
講師をまじえ琴似のまちで、反省会、打ちあわせ、歓談。帰宅したのは午前2時過ぎ。
翌土曜日、6:00起きで取材で那須に出かけ、昨夜帰宅。
ちょっと更新がとどこおってしまいました。

そしてきょうからは、あれこれの予定やイベント山積みの、嵐のような4週間。
スケジュール表が、これほど隙間なし、というのも久しぶりです。
こういう時は、まず机の上を整理、そして頭の整理。
動くこと、手を動かすこと、考えること、その切り替えをしなくちゃね。
素晴らしい青空が、がんばれ〜、と応援してくれています。


7月1日(火)  仔馬の季節

週末に浦河へ行ってきた。海沿いの道がどこまでも続いて、思ったより遠かった。
太平洋は海の色が明るいね。
日高門別でおいしい鴨そばを食べて、新冠、静内、三石、そして浦河。
サラブレッドや昆布でなんとなく名前を知っているけど、
それぞれの町の特徴や、距離感がつかめていない。
今回、いくらかわかったかもしれません。

目的は、浦河でお芝居を楽しむ「ザ・たくあん」(平均年齢74歳!)と
札幌で活動する「生きがい探偵団」の交流会。

互いにお芝居や持ち芸を見せあいっこしたあとは、当然、宴会です。
ここでも、かくし芸パワー炸裂。じいちゃんも、ばあちゃんも
それぞれ色気があって、かわいくて、
胃を全部とったからビールは飲めない、だから日本酒、とぱかぱか飲んでいる。
15人いたのに、ひとり死んで、代わりが入ってこないんだ、とまた飲む。

町民乗馬サークルの練習を見にいった。
小学校高学年くらいの女の子が、
白い小柄な暴れ馬をみごとに走らせて、かっこよかった。

知ってた?仔馬ってコロリと横になって寝るのね。
車の窓から見たときは、死んでるのかと思ってびっくりした。
両手足を横に伸ばして、ノビノビ。かあさん馬がそばにいるときだけ
そうやって安心して眠るんだって。


6月27日(金) ビデオプロジェクターが欲しい〜!

中学校のPTA学年懇談会で、昨年に続いてレッドベリースタジオを使っていただいた。
昨年は40名ほどだったが、今年はなんと60名だという。
イスは40脚。テーブルも足りない。どうしよう・・・・・・。
急遽、小ぶりの座布団というか、床敷きマットというか、をかき集めて購入。
役員さんがお知り合いのツテでゲットしたホテル放出品のテーブルナプキンがお膳代わり。
向かい合わせ4列の宴会スタイルで、結構いい感じでお弁当をいただき、
食後はお目当ての、修学旅行報告ビデオ上映会。

先生が持ち込んでくださったビデオプロジェクターで映した壁一杯の画面には
子どもたちの満面の笑み、真剣な顔、おいしい顔、まぬけた寝顔、などなど盛りだくさん。

それにしても、この大きな画面はすごい。
レッドベリーの備品にこれがあれば、もっともっと、色んな企画が立てられる。
どこかに余ってないかな。半額補助の基金に申請してみようかな。

本日のいただきもの、60枚のしっかりしたホテルナプキン。
これでいつでも、60名様の小宴会が可能。
ちょっと狭いですけど、リラックスした雰囲気は折り紙つきですよ。


6月23日(月) アルテピアッツァ美唄

JRで美唄に出かけた。念願の安田侃彫刻常設展を見るため。特急だと札幌から40分。

廃校になった小学校の校舎、体育館、グランド、敷地に続く里山を含む一帯に、
大理石やブロンズの大小彫刻が展示されている。
建物も、笹薮も、注意深く最低限の手が加えられ、
それぞれの場所に、「ここでなきゃいけない」という絶妙のおさまりかたで彫刻が置かれている。

グランド脇の緑の小山の上にも彫刻がある、と案内図に書かれてあるので登ってみると、
なんと頂上を四角く掘り下げた底に、真っ白い彫刻がうずくまっていた。
裏山の散策路をゆっくりのぼると、ぽっかりと視界が開け、遠くに美唄の町を望む前景に、
おおきな黒い石の彫刻がある。夏の日差しに、さわやかな風。
これを見るためにここまで来た、という感慨が胸いっぱいに広がる。

これでコーヒーが一杯、飲めたら言うことないんだけど。
バスで駅に戻り、電車を待つ間、ベンチで缶ビール。
午後3時、ウィークデイだけど、私の休日。


6月22日(日) 家の仕事は面白すぎて。

いいお天気。スタジオ前のクローバーが丈高くなりすぎたので、草かりがまで刈っていると、
日曜礼拝からお帰りの、隣のおじさんが声をかけてくださった。
「これは土にすきこむと、いい肥料になるんですよ。昔、お宅のおじいさんがそう言って
私の家で刈ったクローバーを持っていらした。さすが専門家でね。野菜でもなんでも、
見事なものが取れるんです。」 そして、家の境界をめぐるひともんちゃくの話や、
大きな木の来歴など、炎天下の立ち話は話題が尽きない。

祖父(父方の)は、当時八軒にあった道立農業試験場の土壌の研究者だった。
北海道内を歩き回って土のサンプルを集め、そこにどんな作物をつくることができるか、
どんな肥料を与えたらよいか、綿密に書き込んだ地図を見せてもらったことがある。
明治24年生まれ、茨城から東北帝大農学部時代の北大に来て、英語は有島武郎に習ったという。
リュックが土の重みでずっしり重くなるまで、留守がちだったらしい。

毎日、赤いバラが次々と咲く。
開ききったものは花首から摘んで、花びらを小鉢に入れ、香りを楽しんでいる。
こちらは祖母が丹精したバラの、生き残りの3本。
街で買うものと全く違うのは、この香りの豊かさである。それはもう、えもいわれぬ素晴らしさ。

母がやってきて、物干し竿の位置を変えたいという。数十キロあるという石を動かす。
梨の木の袋かけをしたのだけれど、高いところの2〜3個手が届かないという。
ちょっとまってね、あとで脚立を持っていって、と。
先日は、台風で2階ベランダのガーデンチェアが飛ばされて落ちてきた。
人に当たったら危険なので、考えた末、プラスチックチェーンでつないでおくことにした。
物置の扉の立て付けがくるって、バタバタうるさいので留め金をつけた。

ひと月くらい前の雨の夜、家に帰るとスタジオの暗闇で水音がする。
天井からザアザアと水漏れ。しばらく様子を見てもひどくなるばかりなので
嵐の真夜中、屋根にのぼり、排水溝にたまった木の葉、小枝を取り除く。
すごい勢いで溜まった水が流れてゆき、一件落着。
(なんか、「嵐が丘」みたいでカッコよかった、かも)

どれもみな、達成感のあるすてきな仕事、なのだが、
面白すぎて、満足感いっぱいで、他のことがさっぱりできない。
考える仕事がちっとも進まない。なにもかもが片付かない。
もとより、掃除・整理・整頓は、超ニガテ事項でもあり。
時間がほしいな。しばらく眠らないですむ方法、ないかな。
いや、眠るのも、お酒飲むのも大好きだし。コラ、それは欲張りじゃないですか。


6月16日(月)

久しぶりに、ちょっと気に入った企画が形になって、心底うれしい。
それが、実に妙なきっかけで、もやもや考えていたことが像を結んだのである。

先月20日、秋吉敏子ジャズオーケストラを聴きに行った。会場は ZEP SAPPORO。
受付で入場料を払うと、ゲームセンターで使うようなコインを1個、くれた。
入場料にワンドリンク含まれている、その引き換え用コインである。
会場に入ると、客席の後方にバーコーナーがあって、そこで飲み物と交換する。
直接現金で払うのと、何が違うのだろう、そのときは、そう思った。
しかし、ずっとそれが気になっていた。よく考えると、なるほど、なのである。

現金を受け取ることと、飲み物をサービスすることは、全く性質の違う仕事である。
客の立場にたてば、「お金は払った。このコインで、いつでも好きなときに、
好きな飲み物と交換することが出来る」というのは、ささやかだが、けっこう、うれしい気分である。

そのシステムを、わがレッドベリースタジオの催しに取り入れることは出来ないか。
なんて思いながら、100円ショップをウロウロしていた。コインに代わるものはないかな。
結局、おもちゃ売り場のプラスチックドミノも、手品コーナーのカラーチップも、手芸コーナーのボタンも
いまいちで、しかし、そうこうするうちに、ほんのりと、ふんわりと、やりたかった催しが像が結んだのである。

コインを1個、にぎりしめて、だれでも、いつでも、参加できる。
コインに代わるものは、思い出の写真。懐かしい記念の品。思い出ばなし。
それをみんなで肴にして、酒を飲んだり、コーヒーを飲んだり、おしゃべりしたり。
幅9メートル、高さ4.5メートルの真っ白い壁(ちょっとタバコのヤニで汚れたかな)
そこに、ペタペタ、なんでもピンナップ。古い映像でも、スライドでも、映しましょう。
八軒東中学校放送局が、20年前に賞をとったビデオが見つかったみたい。
それ、ぜひ、みんなで見せてもらいましょう。
お隣のおじさんの話、琴似屯田兵保存会の皆さんの話、庭にサケがのぼった話、
琴似八軒は面白いエピソードの宝庫です。
腕によりをかけた美味しいさし入れも大歓迎。
昼も、夜も、そんな時間を延々と続けたい。レッドベリーは、それが出来る。

それで、ひょっこり生まれた企画が、7月27日(日)〜8月2日(土)の一週間、開催する
仮称「八軒わいわい広場」です。(れっどベリースタジオ催物スケジュール参照)

1週間といえば、1日12時間として、なんと84時間あります。
実は、琴似八軒に関係ないことでも、楽しければ大歓迎。
ちょっとこだわりの一品で店を出したい、ひとふし歌いたい、得意の技を教える講習会をしたい。
どんなことでも大歓迎。ともあれ、ここからはじめようと思います。


6月13日(金)

高木孔美子の朗読「観音力疾走」(高橋揆一郎原作)の再演を見た。(6月12日19:00、シアターZOO)
初演は昨年2月。以降、道内3ヶ所での公演を経て、脚本、演出の斎藤歩が手直しを加えた。
初演は、端正に読みすすんで高木の読みのうまさを、まざまざと感じさせたが、今回はいくぶん
観客を意識した語りの要素が加わり、読み方の性質を幾とおりにも変え、緩急が加わった。
会話口調などに、こなれない感じが残るものの、全体として幅広い客層が楽しめるものになった。
今後、北海道演劇財団がサポートして、道内作家の作品を取りあげてゆく計画があるという。
今週、誕生日が来ると市内交通無料パスがもらえるのよ、という高木には益々意欲的な活動を期待したい。

初日乾杯のあと、高木と私、それに私たち共通の古い友人と3人で、ススキノ交差点近くの「コートドール」で
ワインを飲んだ。歩道側がオープンテラスになっていて、道行く人やすすきののざわめきがじかに伝わってくる。
それでいてけっこう落ち着ける。3時間あまり居ただろうか。札幌は今、本当にいい季節。


6月10日(火)

劇団えるむ公演「銀のしずく降る夜」(6月9日18:30、かでる2・7)を見た。
今年は知里幸恵・生誕100年、6月8日誕生日に、ゆかりの土地旭川で初日をあけたという。
ふじたあさや構成・演出の意図は、知里幸恵の文章の魅力そのものを肉声で伝える、という一点にある。
「アイヌ神謡集」序文をはじめ、手紙、日記などを読み次いで、19歳で病没した天才の生涯を浮かび上がらせる。
幸恵の文章は確かにすごい。その切迫した緊張感。ちょっと打ちのめされた感じがする。
芝居で残念なのは、終景の音楽(歌いり)があまりに情緒的で、あれでは夭折した少女を悼む話になってしまう。
時代を超えて、言葉の力で語りかけてくる意志の物語を、憐憫、愛惜で閉じていいのだろうか。

どういう劇団なのか、よく知らずに出かけたが、チラシには以前札幌で活動していた青坂章子の名前があった。
現在は東京で活動しているという。幸恵の伯母、金成マツの役。鋭利な印象の強い俳優だが、力を抜いた
柔らかなニュアンスが加わって味わい深かった。

5日のこの欄に、「アイヌ神謡集」をアイヌ語で聞きたい、ということを書いたが、それは多くの人が、長い研究を通じて
追いもとめている課題であることに思い至ると、軽々に手をつけるわけにはいかないことが分かってきた。
千歳の中本ムツ子さんという方なら、もとの言葉を聞かせてくれるのではないか、と忠海光朔さんが教えてくれた。


6月8日(日)  月みたいな太陽を見た

きのう、久しぶりに高砂の「ドラマシアターども」へ出かけた。ずいぶん前の情報で「父と暮せば」公演を見るため。
急いでかけこんだが、受付も客の姿もない。公演が7月末に延期になったことを知らなかった。
お茶をいただきながらゆっくりおしゃべりをして、稽古もちょっと見せてもらって、
ゆったりしたいい時間を過ごさせてもらった。
JRの窓から見た日没がすごかった。大きくて、真っ赤な、迫力ある夕陽。ロシアの森林火事の影響で、
くっきりと見えるのだと聞いた。
小平あたりの日本海の夕陽、、航空機で見る雲の上の夕陽、どれも胸をゆすぶられるけど、
昨日の夕陽には、まれに見るルナロッサみたいな、怖さがあった。

きょうは「大地の侍」(6月8日13:00、アーバンホール)を見た。
昭和31年の東映映画。原作は本庄陸男の小説「石狩川」。当別町役場に残っていた幻の作品。
石狩川の奔流、支笏洞爺あたりか険しい岩山、日本海、起伏ある山々を覆う雪原など、
圧倒的な自然が、背景や雰囲気のためではなく、作品に不可欠の主役としてロケ撮影されている。
子どもの頃大好きだった東映時代劇の懐かしい顔、大友柳太郎! 高千穂ひずる! それに杉村春子もいる。
終映後に対談した川本三郎さんも言っていたが、あのチャンバラ映画の東映が、
同じ時期にこんな作品をつくっていたなんて、あのスターたちが、こんな深い人間性をみせるなんて。
殿様役(川本さんによればいつもは悪役だそうな)の人、よかったなあ。


6月5日(木) 朗読雑感

朗読とひとり芝居を続けて見た。
「松井信子・朗読ステージ」(5月23日18:30、アーバンホール)。
松井は、長野京子「黒ねこリイの話」と江戸川乱歩「人でなしの恋」の2篇を、
友情出演の安藤千鶴子が野坂昭如「凧になったお母さん」を読んだ。作品の選定に気合が感じられる。
朗読、と銘打つ舞台で、読み手はどこまで演じるのか。いつも興味深い点である。
俳優である松井からは、演じたい、もっと演じたい、という気分が伝わってくる。
その制限を、枠組みを、どこに設定するか。最低限の動きと象徴的な照明、それに何を語らせるか。
より演出的、客観的な視線があれば、もっと作品と俳優を生かすことが出来るだろう。
アナウンサーである安藤の読みが、一言一言を固定する作業、ただそれのみに専念したことによって
きわめてスリリングであったことも、朗読という表現形態の面白さを再認識させてくれた。

昨年の来札公演を見逃した、河東けい ひとり芝居「母」(5月30日13:00、教育文化会館小)。
琴似教会の斎藤牧師夫人から券をいただいて見ることが出来た。
三浦綾子の原作が、小林多喜二の母セキのひとり語りに仕立てられている。ふじたあさや脚色、演出。
2〜3ヶ所、聞きにくい常套句があったが、時代と複数の人間像をみずみずしく伝えた。
パンフレットで、ふじたあさやが河東けいの演技について「実感と表現の間をつなぐ粘着力」ということを
言っている。なるほど、と思う。

レッドベリースタジオでも、朗読関連企画をすすめている。
まず、四季の恒例にしようということになった福原光之助(宇夫雅幸)さんの篠笛の会。
夏の企画として、かねて近隣の方からリクエストのある「怪談」をぜひ、と持ちかけ中。
薩摩琵琶錦心流の二反田岳水先生の琵琶、紫水(斎藤和子)さんの語りによる「耳なし芳一」に、
光之助さんの笛が絡んだら、すごいんじゃないだろうか。
岳水さんの「平家物語」。光之助さんの敦盛の笛。無知な私の勝手な夢想はどんどん広がる。

次に、「アイヌ神謡集」をアイヌ語で聞く会。
これはこの度、「アイヌ神謡集辞典」(大学書林)を出版された北海学園大学の切替英雄氏に相談中。
「私が読んでもいいですよ」と言ってくださったから、実現出来そう。
「(知里幸恵の)日本語のほうも素晴らしいから、それも一緒に」と切替さんは言う。
誰にたのもうかな。せっかくなら、オキさんのトンコリとか、ムックリとか、
いっしょにできたらいいな。これも夢想がかけめぐる。

昔、というのは昭和30年ごろ、NHKラジオ夕方6時からの「こどもの時間」で「コタンの口笛」という
放送劇があって、その主題歌に、忘れられない謎のフレーズがあった。
ランラン、ピシカン、コンカニペ。
くりかえされるこのフレーズこそ、アイヌ神謡集「銀のしずく、降る降る まわりに」のアイヌ語であったことを
「きらく」で切替さんの本を見て確認。納得。うれしい。

そしてもうひとつの朗読企画。磯田憲一さん(先日の北海道知事選挙候補)の朗読をみんなで聞く会。
磯田さんにはとっても素敵な16編のエッセイがある。もっとあるのかもしれないし、もっと書いてほしい。
ご自分の文章でも、他の人の文章でもいいので、磯田さんに朗読してもらおう。これも実現間近か。

朗読は、まず、俳優やアナウンサーなど「声と言葉の職人」が読む、ことによる面白さがある。
ラジオの放送原稿を書いていた頃、自分が書いた文章を、
忠海蓉子、山口成子といった当時STVで活躍していたアナウンサーが読んでくれると、
思いもかけないイメージの広がりが出て、いつも驚き、嬉しかった。

もうひとつは、素人による朗読の楽しさである。人柄が文章と響きあう。
5月の桜まつりでの、大沼さんの「戦艦大和の最後」(吉田満)、良かったね。
うそっぷの会の朗読劇も、とってもいい。
「声に出して読みたい日本語」(斎藤孝)あたりも格好のテキスト。
ね、みんな、読んでみようよ。


6月2日(月) 開設にあたって

雑記帳のタイトルを決めました。「いちい」は、「櫟」「一位」とも書く、オンコの木のことです。
母方の祖父が大好きで、実生の幼木を大切に育てたそうです。
おととしの夏、縁者が住まなくなった新得の、祖父の墓を撤去した際、
傍らに5センチほどのオンコの幼木がひとかたまり芽吹いているのを見つけ、持ち帰りました。
これがいま、元気に新芽を吹いています。
庭師の竹内さんが、ちょっと遊んで造ってくれた小庭の昼さがり、
観たこと、聞いたこと、会ったこと、味わったこと、思ったことなど、
おしゃべりさせていただきます。気が向いたら、おつきあいください。(飯塚優子)